January 2008アーカイブ
立ち食い蕎麦を食っている時には、立ち食い蕎麦のことを考えている。
立ち食い蕎麦を食べるとはどういうことか。
一度持ち上げたどんぶりは、終わりまで下ろしてはいけない。
おにぎりなどの夾雑物もできるだけ排したい。
上着を脱いではいけない。肩掛けかばんなども降ろさない。
うどんを頼んではいけない。
ここは通過する場で、滞ってはいけないのだ。
だから、本当は入り口と出口は別のほうがいい。
夕闇が濃くなるころ、雑踏が彩りを強めるころ、
ソファに深く腰掛け、目を閉じ口は半ば開き、つかの間、憩う。
大人だけがその門をくぐることが許される王国、ルノアール。
窓ごしに見える店内の抑えられた照明の下、安楽に満ちた顔に圧倒され、永くその門戸を叩くことができないでいた。
そんな僕も30を過ぎ、大人と呼べる十分な風格を備えてきた。
今日、街中で30分ほど隙間が空き、スターバックスは満席だった。
その先の角を曲がったところに、それはあった。
いまや門は大きく開かれていた。入店を躊躇する後ろめたさは、大人の私からすべて取り去られていた。
私は輝ける王国に迎え入れられ、その園丁となった。
2008年の新春の出来事である。
